「この前奏から聞いたんだけど、蓮は私との将来を思い描いて勉強していたなんて、ちっとも知らなかった。」

「塾通いを始めた当初はそうだったかもしれないけど、今はもう自分の為。俺は大学に進学して、全てを新しくやり直したいんだ。だから、お前はお前で自分の人生の為に頑張っていけよ…。」



突っぱねてくるのは予想通り。
だけど、会話へと繋がったチャンスを逃したくない。

蓮は少し攻撃的になってるけど、私はあの日の事を謝りたかった。



「クリスマスの日、ひどい事を言ってしまって、ごめんなさい。」

「…あれは、お前の本音だろ?」


「違う!あの時は気持ちが中途半端だったと言うか…。なんと言うか……。今は…、蓮とやり直したい。」

「…は?今さら何言ってんの?お前は高梨が好きなんだろ。」


「だからね。あのね…それは…」
「俺の事なんてこれっぽっちも思っていないんだろ?あれが本音なんだろ?もういい加減にして出て行けよ…。そんな話なら聞きたくない。」



蓮は部屋の隅に置いてある梓の荷物を鷲掴みにすると、梓と一緒に部屋の外へと追いやった。
部屋の扉が閉まると共に、蓮の怒っている顔が見えなくなる。





クリスマスの日のあの時の言葉が、根深く彼の心を傷付けていた。

まるで、ナイフで境界線を刻んでしまったかのように私と彼の間に大きな溝が生まれていた。