蓮が私を避けるように急ぎ足で教室を出て行った様子を見ていたので、時間的にはもう家に着いてるはず。

学校から途中まで一緒に帰宅していた紬と別れて、その足で彼の家に向かった。



最近、パタリと足が遠退いたこの道すら懐かしく感じる。
大袈裟に言えば、目をつぶってでも到着できるほど、足が道筋のプログラムを記憶している。





ーーいよいよ、蓮の家の前に到着。

玄関先で一度立ち止まって、外から彼の部屋を見上げた。



いきなり家まで来ちゃったけど…。
蓮は私の話を聞いてくれるかな。



彼女だった頃はは当たり前のように出入りしていたけど、今はインターフォンを押す事ですら勇気がいる。
一度大きく息を吸って深呼吸をして、勇気を振り絞って指に力を入れてインターフォンを押した。



すると……。
インターフォン越しに出て来たのは蓮ではなくて、仕事を終えて帰宅したばかりの蓮の母親だった。