「もしかしたら蓮から聞いてるかもしれないけど。蓮が…、私を忘れるって。」
「……何?あいつ、お前にそんな事を言ったの?俺は聞いてないけど。」
「ここ数日間は口すら聞いてくれなくて。」
「マジか。あいつは梓一筋だったのにな。」
「ねぇ、本当に蓮から何も聞いていないの?」
「聞いてねーよ。お前があいつに浮気浮気ってしつこく責めるから、いよいよ愛想尽かしたじゃない?」
「…違うと思うけど。」
会話内容からして、奏はやっぱり何も聞いていない様子。
梓はガッカリして瞼を落とすと、奏は半やけになりながら頭を軽くかきむしった後、口を窄めて言った。
「あのさぁ…。お前にひとこと言いたい事があるんだけど…。」
「なぁに?」
「お前らが別れた時の話だけど……。あいつの身体は浮気してたかもしれないけど、心は浮気してたの?」
「蓮は浮気したとしか言わなかったから、心が浮気していたのかまではわからない。」
蓮が浮気を白状した時、深く追及しなかった。
ただですら傷付いているのに、これ以上傷口を広げるような真似はしたくなかったから。