ーー大学入学共通テストを間近に控え、昼休みの教室内は黙々と勉強している生徒が目立つように。
梓は一度気分転換をしようと思って、息が詰まりそうな教室を出てから校庭にある花壇脇に一人で座った。
校庭に全身を向け、ゆっくりと深呼吸しながら目を閉じる。
両手を翼のように広げ、冷たく吹き付ける風を身体に浴びて、各教室から聞こえる笑い声や騒いでいる声を耳で受け取りながら、三年間の高校生活を振り返った。
この学校ともあと一ヶ月半でお別れ。
入学してから今日までの三年間なんて、あっと言う間だった。
高校生活三年間の青春の1ページ1ページを振り返ってみると、私の傍にはいつも蓮がいた。
奇しくも三年間同じクラスだった。
小さな事から大きな事まで、かけがえのない日々を共に過ごし、行事全ての思い出までも共有していた。
その証拠が、彼の学習机の2段目の引き出しの中に残されている。
学生生活の残りはもう僅か。
蓮とは毎日のように一緒に過ごしてきたのに、今の状態が続くと卒業を機に二度と会えなくなってしまう。
そんなの嫌……。
でも、会いたいが為に蓮が目指している大学へ進路変更しようとしても、偏差値の問題で同じ大学に通う事が出来ない。
卒業したら、もう会えなくなると思うだけで気持ちが焦る。
こんなに辛い未来が待ち受けているのなら、自分の気持ちなんて気付かなければよかった。