「ほら、そんなに泣かないで…。お互い前向きに生きていこう。」
「……うん。」
「最後まで守ってあげられなくてごめんね。」
「こちらこそ、ごめんなさい…。私は遼くんを幸せにするどころか苦しめてばかりだった。遼くんは優しいから、遼くんなら許してくれるから、遼くんなら私を理解してくれるからと思って、いつも遼くんの気持ちを後回しにしていた。本当はそれが間違っているのに、見て見ぬふりばかりしていて……。」
残念ながら、ありがとうという言葉より今は反省の言葉しか浮かばない。
彼と交際していた半年間、私は一体何をしていたんだろう。
「終わった事はもう忘れよう。今日までありがとう。梓と付き合えて幸せだったよ。俺の方こそ力になれなくてごめんね…。」
先生はそう言うと、車内に置いているティッシュを数枚取り出して優しく涙を拭いてくれた。
今日は先生とは別れようと思っていたけど、こんな残酷な別れ方をしたかった訳じゃない。
本当はお互いじゃない。
歯車を狂わせたのは私の方。
先生は大人だから私を気遣ってそう言ってるだけ。
本当は、私の心が違うところに向いてる事に気付いてるはず。
もしかしたら、今日別れ話を切り出す事を察して、別れやすいように先に話を切り出してくれたのかもしれない。
自分に非があるように伝えれば、私が自分を責めずに済むんじゃないかって。
だから、あんな優しい言い方……。
ずるいよ、先生。
先生の優しさを受け取ると、どうしようもないほどやりきれない気持ちになった。
蓮が私とやりなおしたいと言ってきてから、私は段々嘘つきになって先生にゴメンネの回数が増えていったね。
最後にゴメンね…。
先生には迷惑をいっぱいかけちゃったね。
でも、私の事を最後まで大切に思ってくれて、本当にありがとう。