「俺たちはお互いがお互いを理解しようとしていなかったのかもしれないね。」
高梨はそういうと寂しそうな目でふっと微笑んだ。
私は自分の目で見たものだけで判断してしまい、真実を追求しなかった。
ぶつかる努力もせずに、楽な道ばかりを選んできたバチが当たったのだろう。
私は自分を守る為に先生に嘘ばかりついていたから、心の負債が積もり積もっている。
無音の車内で梓が暗い顔をして俯いていると、高梨は梓の髪をゆっくりと撫でた。
「俺達、もう別れよう。」
「えっ……。」
「お互いすれ違っているのに、気付かぬふりをするのはもうやめないか?」
先生の方から別れを切り出すなんて予想外だった。
頭の中がどんどん真っ白になっていく。
だけど、先生は以前から決心していたかのように迷いなく話を続けた。