「梓、大丈夫?……別の場所で一回落ち着こうか。」



教室から二人を一部始終見守っていた紬は、廊下にぺしゃんと直座りしている梓の肩を抱き寄せて屋上前の踊り場へと連れて行った。



梓は階段に座って前屈みになり、溢れ出る涙をハンカチで拭っていると、紬は隣から無言で髪を撫でた。

紬の優しさに思わず梓の肩が揺れる。



「蓮が…。俺はお前の事を忘れるから、お前も俺の事なんて忘れろよって。もう金輪際近付かないからって……。」

「…うん。」


「私はただクリスマスの日に傷付けてしまった事を謝りたかっただけなのに。」

「…うん。」


「だけど、伝えられなかった。話すら聞いてもらえなかったよ。」

「…うん。」


「私……、最近おかしいの。蓮と言い合いになったクリスマスの日から、毎日胸が苦しくてたまらないの。先生の事が頭の中から消えてしまうくらい、毎日蓮の事を考えてる。」

「………梓、もしかして。」


「うん……。どうやら私、蓮が好きみたい。………18年間生きてきた中で、蓮に冷たくされてる今が一番辛い。別れた時はこんなに辛くなかったのに、今は息ができないくらい苦しいの。」



そう……。
蓮と心に距離を感じるようになってから、私は自分の気持ちに気付いてしまった。