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「蓮……、お願い。話だけでも聞いてよ。」
ーーある日の学校の放課後。
梓は教室から廊下に出て行く蓮のブレザーの袖をギュッと引っ張り、今にも泣きそうな表情で引き止めた。
始業式の日からひと言も話さず耳すら貸さない蓮と二人きりで話し合う為に……。
だが、振り返った蓮はまるで別人のように非情な目をしている。
蓮は梓の手をそっと引き離すと、何週間ぶりに口を開いた。
「あれから自分なりに考えたんだ…。お前からこれっぽっちも思われない程度なら、自分が頑張る意味なんてない。俺はお前の事を忘れるから、お前も俺の事なんて忘れろよ。もう金輪際お前に近付かないから。」
梓はそう言われると、まるでシャッターが閉ざされてしまったかのように目の前が真っ暗になった。
クリスマスの日に咄嗟に吐き出した言葉が、こんなに早く蓮の心を入れ替えてしまうなんて思ってもいなかった。
今まで蓮が優しくしてくれた分、甘えていた。
『ごめん』って頭を下げて謝れば、『今回だけだよ』って言って許してくれると思っていた。
でも、実際は……。
蓮は最後まで感情を覗かせぬまま、その場を後にした。