ーー今日から三学期に入った。
小雪がちらつくほど厳しい寒さの中、心に負債を背負ってしまった私は、いつもより15分早めに学校に向かった。
勿論、蓮にあの日の事を謝る為に。
先生の彼女として正解だった言葉は、蓮の友達としては失格に。
もう少し思いやりを持って接してあげれば良かった。
押し寄せる不安と戦いながら、後悔に満ちた日々を送っていた。
蓮は始業開始の5分前になっても姿を現さない。
クリスマス前までは、私が到着するのを待つくらい早めに登校していた。
隣から「梓ー!」って明るい声で出迎えてくれた。
でも、今日はまだ座席に荷物すら置いていない。
結局、彼はチャイムと同時に教室に入室。
そのせいで、謝るチャンスは自然と後回しになった。
いつもは私よりも先に登校していたのに、今日はどうしたんだろう。
…ま、いっか。
時間はたっぷりあるし、今日は午前日課だから帰りになったら謝ろう。
早く謝りたくて一日中ソワソワしていた。
長いHRはそっちのけで、後ろの席から蓮の背中ばかりを見つめていた。
そして、帰りのHRが終わると直ぐさま蓮の元へ。
「れ…蓮。あのね…。」
ガタッ…
スタスタスタ…
私が声をかけた瞬間、蓮は黙って席を立って教室から出て行ってしまった。
以前はひっつき虫だったのに、今は考えられないくらい背中が怒っている。
傍で見ていた紬も蓮の異変に気付いた。
「蓮くんどうしちゃったんだろうね…。梓に声をかけられても返事をしないなんて。喧嘩でもしたの?」
「…うん。まぁ、そんな感じ。」
この時は、少し怒ってるかな程度にしか思っていなかった。
蓮が優しくしてくれていた分、少し時間が経てば機嫌を直して以前のような関係に戻ってくれるんではないかという甘い認識があった。