梓の感情がグラついてると確信した蓮は、今が話し合いのチャンスだと思った。



「行かせない…。まだ話は終わってねぇし。」

「離して!話はもう半年以上前に終わってるの。」


「高梨はやめろ!コソコソ会うような関係で本当に楽しいか?本当にそれで幸せ?自分の胸に手を当てて聞いてみろよ。校長室で散々な目にあっただろ。」

「…蓮には、関係ないから。」



蓮は復縁を願うばかりに気が立っている。
一方の私は、今にも何かが壊れてしまいそうな気がして怖くなり、彼を突っぱねた。



「俺なら一番近くで守れる。俺ならコソコソせずに堂々と付き合える。俺なら声を大にして好きって言える。」

「知らないわよ…。私達はもう別れたんだからいちいち干渉しないでよ。」


「世間の目を気にしてお前を守りきれない高梨(あいつ)じゃなくて、お前だけを一途に想い続けている俺にしとけよ………バーカ。」



お互いの感情が昂る中…。
蓮は左親指の腹を私の頬に触れてキスをした。


唇を強く押し当てる、数ヶ月ぶりのキス。

私の心を支配する……、王様。



ギュッと濃縮された気持ちが、唇越しに流れ込んでくる。



先生のキスとは違う。



足が動かない。
身体が拒まない。


それどころか、唇を受け入れてしまっている自分がいる。