まるで、棒磁石のN極とS極が巡り会えたかのように強く抱き寄せられると、蓮は耳元で囁いた。



「別れたくなかった。自分の失態に後悔してる。」



一瞬、涙が出そうになった。


蓮は自分勝手。
今さら浮気の謝罪をしても、何も変わらないのに。
あの時は充分に苦しんだのに、別れた今でも苦しめるつもりなのかな。


謝罪言葉はもう二度と聞きたくない。
最近、友達としての関係がうまくいっていたのに。
今になってどうして話を蒸し返してくるの?



何かが弾けてしまいそうになった瞬間、話に区切りをつけるかのように両手で蓮の身体を力強く突き放した。



「その話ならもう聞きたくない。私達、もう終わったんだよ…。」

「お前が高梨と結婚するなんて無理だから。」


「結婚って、何の話よ…。まだ婚約すらしてないんだけど。」

「でも、お前もあいつも年齢的にいつだって結婚出来る状態にあるだろ。先の事は誰にもわかんないから、先ずは俺の話を聞いて欲しい。」


「ちょっと、話が先走り過ぎじゃない?訳分かんない……。もう帰るっ。」



感情的になった梓がプイッと背中を向けると、蓮はすかさず手首を掴んだ。



「お前は肝心な話になるとすぐに逃げ出すから、俺らはいつまで経ってもまともに話せねーんだよ。今日こそきちんと話し合おう。」



いつになく真剣な蓮。
別れ話をした時よりも、引けを見せない強気な姿勢に私の理性は徐々に奪われていく。



「それならっ………。何で浮気を繰り返したの?許してあげた途端、また浮気。私がどんな気持ちで二回の浮気話許したと思ってるの?別れたくなかったなんて、どのツラ下げて言ってるの。」



気付いた時には感情を爆発させていた。
自分でも歯止めが効かないくらいに。



最低…。
バカみたい。
蓮が浮気をしたのはとっくの昔なのに、今さら熱くなっちゃって…。
もう、ワケワカンナイ。