街中を駆け抜けてから、蓮がピタリと足を止めて辿り着いた先。

そこは、昔二人で一度だけ来た事のある、海が見える公園だった。
公園は高台にあって、海と街中が一望できる。


公園周辺は薄暗い街灯と月明かりだけ。
潮風で髪が頬をくすぐり、波打つ音が耳に聞こえてくる。
静寂に包まれている海は、月夜が反射して波がキラキラと輝いていた。



周りを見渡すと、所々にカップルが椅子に座って肩を寄せ合いながら二人だけの世界を楽しんでいた。



蓮は私と手を繋いだまま。
手を離すタイミングがわからなかった。

二人揃って海の方を黙って眺めていると、先に蓮が口を開いた。



「俺さ、もうダメかも。頑張り過ぎて心がもたないみたい……。」



蓮は珍しく弱音を吐いた。
だが、梓はエッと驚いた表情で蓮を見る。



「……もうダメって?病気じゃなかったんでしょ。この前、自分で暴露したじゃん。」

「あのなぁ、そっちじゃねーよ。お前の頭ん中、一度病気から離れよう。」

「違うの?…じゃあ、何の話?」



梓は首を傾げて質問すると、蓮は寂しそうな瞳を向けて言った。



「実は、去年のクリスマスお前と一緒にここへ来る予定だった。」

「確かあの日は、蓮と浮気の件で喧嘩しちゃったから、待ち合わせ場所からそのまま真っ直ぐ家に帰った気がする。」


「本当はこの場所でクリスマスプレゼントを渡すつもりだった。」

「そっか…。私にプレゼントを用意してくれてたんだね。ありがとう。」



梓はそう言って蓮の手を離すと、蓮は言った。



「今更だけど……。浮気してごめんな。俺が悪かった。」



月明かりが二人の姿をほんのりと照らす中。
蓮は過去の過ちを謝罪して、梓の手を引き寄せて抱きしめた。