カラオケの会計を紬と大和に任せた梓と蓮は、自動ドアの前でヒソヒソと耳打ちする。
二人は会計を終えて自動ドアに向かった瞬間、梓達の作戦はいざ決行へ。



蓮「じゃあ、俺ら先に帰るわ。まったね~!」

梓「紬、大和。よいお年を~。」

大和「ちょちょちょ…ちょっと、お前ら……。」



梓と蓮は、大和の引き止める声を背中で聞き、ドアを出た後に全力疾走する。

二人は紬と大和を二人きりにする事を目論んでいた。
普段から迷惑をかけている紬に感謝の意を込めて…。



「梓っ…、こっち!」

「うっ、うん…。」



時計の針は19時を指していて、辺りはすっかり暗闇に包まれている。
頼りになるのは月夜と街灯りとクリスマス用に飾られたイルミネーションだけ。

普段より人通りの多い街中は、クリスマスという事も重なりカップルで溢れ返っている。



道を立ち塞いでいる人々の間を、蓮に続いてすり抜けて走っていたら、上手く避けきれなくて人にぶつかって転んでしまった。



ドンッ……



「あっ、ごめんなさい…。イテテ…。」



すると、気付いた蓮は足を引き返して、地べたに座る梓にサッと右手を差し出す。



「大丈夫?怪我してない?」

「うん、大丈夫。ありがと。」



梓は蓮を見上げてゆっくりと手を重ねた。



久しぶりに触れた蓮の大きな手。
数ヶ月前までは、毎日のように握りしめていた。

蓮は人がごった返す街中で、私とはぐれないようにギュッと力強く手を握りしめた。