部屋の中央に置かれている、グランドピアノの自動演奏が始まるクリスマス仕様のイタリアンレストランの店内。
間接照明と赤いテーブルクロスの上に置かれたクリスタルガラスのキャンドルだけが、互いの顔を映し出している。

高梨は手元のワインリストを開いた。



「梓は何飲む?」

「コ…コーラで。」



それから店員を呼び、飲み物を注文。
高梨の前には赤のグラスワイン、梓の目の前にはコーラが運ばれてきた。


ピアノ演奏が流れる物静かな店内。
シックでお洒落な内装。
フォーマルな装いの客層が目立つ。



「先生、一見高そうに見えるお店だけど…。」

「店でも『先生』って呼ぶの?俺達、交際してから5ヶ月も経つよ。」


「…ごめんね、(りょう)くん。あは…、まだ呼び慣れないかも。」

「今日みたいに特別な日は、美味しいものを食べさせてあげたいから心配しないで。」



男性は蓮しか知らなかった分、大人のデートが不慣れでちょっと恥ずかしい。
真っ赤なリップは少し背伸びをした証拠。

前菜が運ばれて食事を進めると、先生は言った。



「梓の思春期は終わったの?」

「もう!子供扱いしないで。そんなのとっくに終わってる。」



先生はワイングラスを片手に冗談交じりで私を子供扱いする。
今日の装いは一人前の大人だけど、先生の中ではまだまだ子供なのかな。