蓮を先輩って言ってるから、あの子は年下なのかな。
…なんて思いながら、遠目から告白現場を見守った。
告白している彼女は色白で下がり眉毛に、前髪が厚めで茶髪の肩までのストレート。
国民的アイドルグループの一員に入ってそうな雰囲気の可愛らしい子。
自分が知っている範囲では、蓮の理想のタイプ。
子犬の泣き声のような甘え口調は、学校一の超問題児である花音と然程変わらない。
過去の統計データによると、蓮に近付く女はみんなダメ女になってしまうらしい。
……ま、私は違うけどね。
彼女は遠目から見ていても納豆のように粘り強く、引けを見せないほどの執着心。
残念ながら、今はとてもじゃないけど話しかけられない様子。
だけど、何となくこの場を離れ難くなってしまい、つい聞き耳を立ててしまった。
「柊先輩が好きなんです。彼女と別れて私を選んで下さい。お願いします。後悔させません。」
納豆系の彼女が言い表しているその【彼女】とは、ズバリいま偽彼女中のこの私。
後夜祭のステージ上で蓮が私に告白したからと言っても、蓮が好きな女子達には何も関係ない。
彼女達は二番手でも三番手でもいいから、蓮の彼女になりたいと思ってる。
だけど、今日の彼女は私と別れてくれとまで言ってるんだから、きっと自分が本命になりたいんだね。
蓮と別れる前にも、このような場面に何度か遭遇した。
その時の断り方は、いつも『付き合っている彼女が大事だからごめんね。』だった。
だけど、今は実質フリー。
相手は蓮の好みの可愛い系。
即答しない蓮がどうやって彼女に返事をするのかがとても気になってしまい、ここから離れる事が出来なくなった。