ーー本校には死角がある。


どの教室から見下ろしても、木々に遮られていていて見えないほんの小さなスペースがある。
そこは、生徒達の告白の場所として利用される事が多い。


ひょっとすると、そこに蓮がいるかもしれないと思って迷わずその場所を目指した。



すると、告白スペースをあとひと曲がりという所で女子の声が耳に入った。
足音を立てずにそろりそろりと近寄り、建物の角からひょこっと顔を出して覗いてみると…。

やっぱり読み通り、蓮はその場所にいた。



「柊先輩っ!私、入学してからずっと柊先輩だけを見てきました!」

「えっ…。君は俺のストーカーなの?」



蓮がそう言った瞬間、彼女に不穏な空気が流れる。



「違いますっ!ストーカーじゃありません。あのぅ…私、気付いたら柊先輩ばかり目で追っていて…。何処に居てもすぐ見つけてしまうって言うか…。でも、たまに目が合ってますよね?」

「えっ、目が合ってた……?君だけを見たつもりはないけど…。ってか、やっぱりストーカーじゃねーか…。」


「だから、違いますよぉ…。柊先輩の事が好きで気になるって言うか…。見てると胸がドキドキして、ずっと傍で見ていたいって言うか…。」

「ははっ、そんなに俺の事ばかり見るなって。穴が空いちゃうだろ。」



蓮は相変わらずだった。


まるでコントのような会話に聞こえるが、実際そうではない。
告白され慣れているからこそ、相手に対して緊張を解す、彼なりの手法なのはわかっている。