ーー紬のノート内のメモを読んだ高梨は、約束の16時半に紬が待つ教室へ。


グラウンドから部活動が行われている声や音が届いてくるほど物静かな教室に一人居止まる紬は、まるで置き物のように自分の座席に座っていた。



「工藤、何か悩み事でも…?」



高梨は、梓との関係が紬にバレている事を知らない。
まるで個人面談を始めるかのように、机を向かい合わせに揃えて椅子に座った。



「昨日………、知りました。梓が先生と交際している事を。」

「えっ…。」



高梨は声を詰まらせて動揺する。

まるで芋づる式のように、次から次へと自分達の関係が明かされていく事態に心が対応しきれずにいた。



「先生はどうして梓を助けてあげないんですか?……それとも、梓の身に起こっている事に気付いてないんですか?梓はいつも苦しんでいるのに、先生は手を貸してあげないんですか?」

「…一体、何の事?あんな目って…?菊池がどうかしたの?」


「先生は梓の彼氏なのに知らないんですか?梓は誰かからしょっ中嫌がらせをされてますよ。」



紬は高梨に衝撃的な事実を明かした。
一方、梓から何も聞かされていない高梨は寝耳に水に。


紬は、偽彼氏になってまで梓の身を守ろうとしている蓮と、恋人の存在感どころか助け舟すら出さない高梨を両天秤にかけてしまっていた。