ーー蓮が帰宅してから5分後。
教室で帰り支度を終えた梓は、自分の机でスケジュール帳にメモをしている紬に声をかけた。
「紬、か~えろっ!」
すると、声に気付いた紬は口元だけ軽く微笑ませてこう言った。
「……梓、悪いんだけど先に帰っててくれない?」
「どうしたの?今日は一緒に帰れないの?」
「うん、ごめん。先生に用事があるから職員室に寄ってから帰るね。」
紬は先程からずっとソワソワしていた。
何度もチラチラと壁時計を見ていたり、何処となくボーッとしてたり。
この時は、特に気にも留めずに一人で帰宅したけど、紬には大事な用事があった。
昨日、紬に高梨先生との経緯を全て話した。
紬は密会メモの事が念頭にあったのか、数学のノートに16時半に教室へ来るようにと、高梨先生にメモを送っていた。
そう……。
紬は高梨先生と二人きりになって、私の話をするつもりでいた。