どんな演技派女優でも、先程の気迫溢れる演技には敵わないだろう。
蓮もしっかり騙されている。
蓮に抱えられて保健室方向に向かっているが、残りの時間を確認しようと思って手元の時計を見ると同時に予鈴が鳴った。
キーンコーンカーンコーン…
ヤバっ、昼休み終了まで残り5分しかないじゃん…。
次の授業まで時間が迫って焦りを感じると、もう痛々しい演技なんてどうでもよくなった。
すくっと直立してから蓮の腕を引っ張って走り出し、ものすごい勢いで保健室の前を通過。
「えっ、お前…腹大丈夫なの?保健室通過してるんだけど。」
蓮は突然人が変わったかのように走り出した私にポカンと口を開ける。
そんな蓮の気持ちなど無視して、あまり人影のない理科室前へと連れて行った。
ハアッ…ハアッ…ハアッ……。
二人とも全速力で走ったから息が上がる。
昼休み終了まで残り5分を切ったので、長い前置きはやめて本題に入った。