そもそも蓮の言い方が紛らわしかった。

『俺には時間がない』なんて言ってからも、不審な言動が相次いでいたから更に勘違いへと導いていた。

終いには、勘違いしてるところをつけ込んで、『具合が悪い』なんて嘘をついて先生とのデートを邪魔してきたからね。



多分、紬に真実を告げるのは私の口ではない。



そう判断した梓は、今にも花音の胸を掴みかかりそうな勢いの蓮の右腕を振り払うかのように掴み取り、怒りでひん曲がった口角に力を入れて前屈みに腹を抱え込んだ。



「蓮…。あいたたたた……。お腹が痛い…。」

「えっ…、腹のどの辺が痛いの?今から保健室に連れて行こうか?」


「こ…この辺りが…。早く…時間がないから。」



当然、お腹が痛いと言うのは嘘。
若干汚い方法ではあるが、花音の前から蓮を連れ出すにはこの作戦が一番有効的だと思った。