梓は全速力で教室を目指し、ゼーゼーと息を切らしながらも教室に到着。

腕時計で現在の時刻を確認。



ーー昼休み終了まで残り8分。



後方扉から教室の中をヒョイと覗き込むと…。
蓮は後方の窓際に腰をかけて、鼻の下を伸ばしながら推定Dカップと思われる花音の胸元とお話しをしている。

何を喋っているのかわからないけど……。
とってもとっても、楽しそう。



そんなだらしない表情を見た瞬間。
先日、蓮が少しでもカッコ良いと錯覚した自分を恨んだ。



「あ!梓、おかえり。進路相談長かったね。」

「あっ、うん…。」



私が教室に戻った事にいち早く気付いた紬。
だが、蓮の身体を心配していた彼女も今回の被害者となる。



一体、誰が紬に蓮の真実を告げるんだ。



確かに、本人に確認もせずに病気だと繰り広げたのはこの私で、みんなに迷惑をかけたには違いないけど。
私の気持ちを弄んだ蓮も同罪なはず。



紬は普段から控えめで心配性な性格。
先生との関係も思い切って打ち明けたばかりなのに、更にダブルショックを与える勇気なんて私にはない。