ふと思い返してみると……。
病気の割には、病状らしきものがほとんど感じられなかった。
薄々おかしいなと感じていたけど、真実に目を向けようとしていなかった自分も悪かった。
そう言えば、蓮は先生とのデート中に『具合が悪いから家に来て』とメッセージを送ってきた事があった。
あの時は、先生が当日限りのチケットを先月から用意してくれていたから、二人でサーカスを観に行こうとしていたのに……。
蓮は病気だと思い込んで心配している私の気持ちを悪用して自宅に呼び寄せたよね。
それは、確実に私のカン違いを弄んでたって事だよね。
あいつめ………。
絶対許せない。
「貴重な情報をどうもありがとう。この話を本人に直接確かめてくる。」
「おっ、おい…。蓮を許してやれ。あいつに悪気はないと思う。」
大和に礼を言って既に走り出していた私は、蓮を擁護する大和の声など届いていない。
昼休みは、残り10分。
この短い時間の中で、私の気持ちを弄んだ真意について追求しようと思った。