『具合が悪い』とメッセージが来て家に行ったあの日以降も、蓮の様子は何一つ変わらない。

しかも、呼び出されたあの日も元気そうにしていたので、同じく体調を心配をしている大和にその話を伝えた。



「蓮、少し前は具合が悪そうだったけど、最近調子がいいね。」

「…え?誰が具合悪いの?」


「わかってるでしょ。蓮だよ、蓮。少し前に病気だって伝えたじゃん。」

「………は?何言ってんの?あいつは病気なんかじゃねーよ。本人の口から聞いたから間違いない。」



大和は急に真顔になり、自信たっぷりに胸を張った。
私は数ヶ月間、蓮が病気だと信じ込んでいた分、衝撃的な告白に度肝を抜かれた。



「蓮は、病気じゃ…ない……?」

「まさか…、まだ知らなかったの?あいつは梓がカン違いしている事をまだ伝えてねーの?」


「ちょっちょっ…ちょっと待って!…それ、本当なの?蓮が病気じゃないって…。しかも、私が勘違いして接していた事も知ってたの?」

「俺が何でわざわざ嘘をつかなきゃいけないんだよ。………あれ、ひょっとして暴露した事がマズかったかな?」


「…ううん、直接本人に聞いてみるね。」

「ひょっとして、この話は内緒だったのかな…。」



梓は俯き加減で、プルプルと握り拳を震わせていた。
唯ならぬ雰囲気が伝わると、大和は慌てて手で口を塞ぐ。



病気で先が長くないと思っていた蓮が病気じゃない。
まぁ、病気じゃないのは一旦置いといて、私がカン違いしている事を知りながら隠していたとは…。



嬉しい…。
蓮が病気じゃないのはとても嬉しいんだけど…。


めちゃくちゃ許せない。



安堵と引き換えになって湧き上がってくるこの怒り。
プルプルと揺れる拳のコントロールが利かない。