紬は何度も頷きながら、無表情のまま黙って話を聞いていた。



「私は真実を知らずに蓮くんとの幸せを願ってたよ。だけど、先生との関係を聞いた今でも蓮くんとの復縁を願ってる。」

「…でも、私には先生がいるから。」


「先生とは少しぎこちないんでしょ?じゃあ、早く先生と別れて蓮くんとやり直せばいいのに。それじゃあダメなの?」

「うん…、ダメ。気持ちが不透明になっているのはいっときのものだと思うし、先生は先生なりに努力してくれているから…。」


「……よく思い出して。いつも梓をかばってくれたのは蓮くんだよ。校長室での件だって蓮くんが助けてくれたんでしょ?」

「うん……。」


「それに、梓が嫌がらせを受けた時だって、一番に力になってくれたのは蓮くんじゃないの?」

「でも、蓮とはもうとっくに終わったから…。」


「梓…。」



復縁を願う紬の話に、頑なに頭を横に振るだけの私。



私と蓮の両方を間近で見ていた紬にとっては、到底納得がいかないだろう。
どんなに説得しても一筋縄ではいかない私に、手立てがない紬は瞳を潤ませていた。



「もう…。梓はバカなんだから。」



口を固く結んで肩を震わせていた紬の左目からは、涙が一粒こぼれ落ちた。