すると、紬は焦るあまりに階段を駆け下りる際に階段を一歩踏み外した。
「きゃっ………。」
「危ないっ……!」
私が悲鳴混じりのその一言を発した瞬間…。
ガバッ………
すぐ後ろまで接近していた大和が、紬の後ろからギュッと抱きしめて、階段からの落下を防いでくれた。
「あっ……あぁ……っ。」
紬は恐怖で声が漏れると、足元をガタガタ震わせて息を荒くする。
すると、大和は紬の耳元で落ち着いた口調で囁いた。
「辛くても逃げちゃダメ。ちゃんとあいつの話を聞いてやって。紬にいつか話すつもりだったと思うから。」
混乱していたとは言え、片想いの相手の大和にバックハグされた紬は完全にノックアウト。
温もりが直に伝わった紬の顔は、火が吹きそうなほど赤い。
「うっ…………、うん。わかった。」
紬は本調子が狂わされるあまり、頭を縦に振る事しか出来なかった。
こうして、大和が紬を救助してくれたお陰で、私は向き合うチャンスを与えてもらった。
勿論、紬に誤解を解くのは先なんだけど…。
紬も恋する乙女なんだなぁと、つくづく実感した瞬間だった。