ーー今晩も呪文のように、先生に電話でひたすら謝り続ける私。


私は高速道路の一歩手前で車から下ろしてくれと頼んで、先月から予約していたサーカスのチケットをシートに置いて車から飛び出したんだもんね…。

腹を立てるのは当り前だよね。



だけど、あの時は蓮が自宅で一人きりで倒れちゃったらどうしようかと思って、見境がなくなってしまった。

実際は全然具合悪くなさそうだったけど、『行くな』と引き止められてしまったから、そのまま二人きりで過ごしてしまった。


最低、最悪。


先生は私の大事な恋人なのに、最近は元彼蓮の調子に振り回されてしまっている。





嘘は重ねたくない。
でも、本当の事を言って先生を傷付けるよりはマシだと思って、再び嘘をついた。



「今日はごめんなさい。親戚に不幸があって、急に行かなきゃいけなくなって…。」

『それなら素直に言えばいいじゃないか。ずっと梓の心配をしていたんだよ。電話を何度もかけても全く出ないし…。』



連絡もなしにずっと待ち続けていてくれた先生の気持ちを考えたら、胸がキュッと苦しくなった。



最近、色んな人に嘘ばかりついている。
嘘って本当に心苦しいし、本当にキライ。



交際していた頃の蓮は、浮気を素直に白状したから私よりももっと辛かったのかな。
あの時は、どんな気持ちで私と向き合ったのだろう。
きっと、小さな嘘を重ねている今の私よりも辛かったはずだよね。


でも、浮気を繰り返して私を裏切った蓮の方が、圧倒的に悪いんだけどね。