すると、蓮はこの話になった途端ふざけた表情を急変させた。



「お前は………、どうだったの?付き合ってた時、………俺のどんな所が好きだったの?」



そう言われた瞬間、急に胸がドキドキしてきた。
真っ直ぐに見つめてきた麗しい瞳に、心の中が見透かされてしまいそうな気がしてならない。





いきなりどんな所が好きだったかと言われても…。
古い話をされても困っちゃう。



だけど……。
付き合っていた当時の蓮は、いつも心を支配する王様だった。
それだけは間違いない。

でも、今はもう全てが無意味だから答える必要なんて…。



「…ごめん。もう帰るね。」

「梓っ…。」



梓は返事をせずに席を立ち、荷物を持って逃げ出すように家を飛び出した。



どうして別れてから数ヶ月後の今になって、当時の気持ちを聞いてきたんだろう。
いま先生と交際している私に、過去の気持ちなんて聞いても無意味なのに…。



だけど、蓮の瞳を真っ直ぐに見つめた瞬間、胸の中の何かが渦巻いていた。