蓮は『具合が悪い』と言って、昼前に高梨先生の車に乗る私にメッセージを送り。

『行くな』と言って、蓮の家から帰ろうとしている私を引き止めた。



デートを放ったらかしてきたから、私は今すぐ先生の元に向かわなきゃいけないのに…。

この家を出ていく事が出来なかった。

蓮の体調不良が本当かもしれないし、手を掴んでいた時の瞳が寂しそうだったから。



「両親が不在中だからって、変な事しないでよ。」

「しねーよ。俺を何だと思ってる。」


「だから、エロバカ狼でしょ?この前も言ったじゃん。もう忘れたの?」

「お前だって他人事じゃねーだろ…。まぁ、いいや…。早く家に上がって。」



手を離してぶっきらぼうにそう言うと、一緒に部屋に行くよう背中を向けた。


足元で尻尾を振って、再会を喜ぶ愛犬キャラメル。
愛くるしいキャラメルまでもが、私の足を引き止める。



仕方ない…。
既にデートを投げ出してしまっているから、先生には後で謝ろう。



悪意はないけど、自然と理解ある先生の方を後回しにしてしまった。



「今日だけだからね。」



膨れっ面のまま渋々靴を脱いで家に上がり、玄関で靴を揃えた。



こうして私は、蓮と別れてから二度も彼の自宅にお邪魔する事に。