梓は高速近くのバス停に到着すると、到着したばかりのバスに飛び乗った。
手すりに掴まり、ハァハァと息を切らしながら進行方向へと目を向ける。



間に合うかな。
倒れてないかな。
蓮が私に助けを求めるくらいだから、ご両親とは連絡がつかないのかな。

他に頼る人がいないから連絡してきたんたよね。
もし家で倒れていたらどうしよう。



バスの中で不安に押し潰されてる間、先生から何度も着信が…。

でも、電話に出れなかった。
蓮が心配で先生の事を考える余裕がない。



梓はバスを降りてから電車を乗り継ぎ、走って蓮の自宅を目指した。



駅から走って7分後、蓮の自宅に到着。
震える指先でインターフォンを押すと…。



「おー、来た来た。お前、メッセージの返事くらいしろよ。今から一緒に昼メシ食おう。」



玄関の向こうから出てきたのは、明るい声で私を出迎えた蓮。

体調不良どころか……。
普段と何一つ変わらない様子に見える。
逆にゼーゼーと息を切らしてる私の方が具合が悪そうだ。


推測とのギャップに拍子抜けしたけど、念の為に聞いてみた。



「あ…れ……。具合が悪いのでは?見る限りではピンピンしてるようだけど…。」

「えっ!具合?…あぁ、そうだ。ゴホゴホ…。今朝から調子がイマイチで。(…やべぇ。不治の病中だった事を忘れてた)」



指摘した途端、何故か咳き込む蓮。
明らかに疑わしいし胡散臭くもある。