梓はメッセージを見た瞬間、考えるよりも先に指が動いていた。
『どうしたの?』
『具合が悪いんだけど……。親がいないから今すぐ家に来て。お願い。』
蓮からの返信が瞳に映った瞬間、梓の胸がドクっと低い音を立てた。
そこには、体調不良を訴える文章が書かれている。
『助けて』と書いてあるくらいだから、体調はかなり悪いのかな。
メッセージを返信しようと思ったけど、あと30mほど進んだら高速道路に突入する。
一度高速に乗ると次の出口まではだいぶ先。
毎週この道を通っている分、道路状況がよくわかっている。
今のんびりと返信してたら、タップしている間に高速に突入してしまう。
…かと言って、先生の目の前で蓮に電話する事も出来ない。
もし、家族の不在時に蓮の病状が悪化して倒れたりしたら?
でも、先生は先月からサーカスのレアチケットを用意して、今日という日を楽しみにしている。
蓮の体調が心配だけど、先生の気持ちも大事にしたい。
どうしよう……。
私は二者択一の苦しみに板挟みされていた。
車は想像以上のスピードで高速道路へと接近中。
事態が急迫していく中、梓の気持ちは煽られていく。