ーー俺が梓の偽恋人としてスタートしてから、二週間経ったある日の放課後。


梓は紬と一緒に買い物に出かけてしまったので、奏と一緒に帰ろうと思って廊下に一人で歩いていると……。
すれ違いざまに高梨に話があると呼び止められて、そのまま校舎裏に連れ出された。



「この間の件は礼を言う。悪かったな。柊のお陰で助かったよ。」

「勘違いすんな。別に先生を助けた訳じゃないから。俺は梓が退学になったら困るだけ。」



梓と交際している高梨。
そして、梓の偽恋人の俺。

ライバル関係にある俺達は険悪ムードに。



礼を伝えてきた高梨だったが、話はそれだけではなかったようで…。



「……柊。俺達の仲を知ってるのに、どうして彼女ばかりに執着するんだ。」

「あいつに惚れてるからに決まってるだろ。」


「お前はこれから高校を卒業して進学して、まだまだ多くの人との出会いがあるのに、元カノばかりに執着するのはおかしいだろ。」

「俺の人生勝手に決めつけんなよ。先生は校長室であいつを守りきれなかっただろ?」


「それは、最善策を練っている間にお前が校長室に入って来たから……。大人には気持ち一つだけで動けない複雑な事情があるんだ。」

「そんなの俺にはわかんねぇし。だけど、卒業までには絶対梓を返してもらうからな。」



男同士の一対一の真っ向勝負。
お互い1歩も譲らず睨み合いは続く。