仏頂面の蓮を中庭のベンチに座らせてから、ここに来る途中に売店で購入した牛乳を両手に握らせた。
「ほら、牛乳でも飲んで落ち着いて。顔が怖いよ。それと…はい、蓮のカバン。早く中からお弁当出して。」
「お前さぁ、せっかく犯人取っ捕まえようとしてたのに、何で止めるんだよ。あ゛あーっ!マジで許せねぇ。」
穏やかな梓の口調とは対照的に、蓮はイライラしながら貧乏ゆすり。
「私ならもう大丈夫。さっき牛乳と一緒におにぎり買ったから、ここで一緒にお昼ご飯を食べよ。」
梓がニコリと微笑んでそう言うと、蓮はむくれて口を尖らす。
「……お前だって相当傷ついているだろ。手作り弁当をひっくり返されたら鉄の心臓でもたねーよ。それに、今はのんびり飯を食いたい気分じゃない。」
「蓮が私をかばってくれただけで充分。ほら、あーんして。私のおにぎりを一口あげるから。」
「…。」
「ほら、口を開けて。はい、あーん。」
「………あーん。」
ふてくされながらも素直に口を開ける蓮は、何だかんだ言っても私には勝てない。
そんなところが可愛かったりもして…。
おにぎりをもぐもぐと噛み砕いている表情はまだ冴えない。
でも、時間と共に怒りは落ち着いてきたみたい。
だけど、堂々と付き合うってスゴイ。
最近は人目を忍んでデートしてたから、そんな気持ちはすっかり忘れてたよ。
今は本物の彼女じゃないのに、全力で守ってくれるなんて思ってもいなかった。
蓮が得する事なんて一つもないのにね…。
恋は負けを知らない原動力になる。
蓮が身体を張って教えてくれるまで知らなかったよ。