バカ

エロ

自分勝手…



数秒前までの呑気で平和主義者な蓮は、今この場にいない。



ここにいるのは、偽彼女の私を守ろうとするあまり自分を見失っている蓮。
輝きどころか正気を失わせたような下目は、犯人を地獄の底へ突き落とす覚悟が出来ているように思える。



先日開催されたイケメンイケジョコンテストで三年連続優勝したアイドルのような愛くるしい蓮の姿は、いまどこにもいない。

今にも人を殺しかねない勢いに正直焦った。



怖くて冷や汗が止まらない。

声一つ届かない室内をそのまま右回りで見渡してみると、クラスメイトは深刻な空気に包まれている。

みんなは明るくて愛想が良くてバカな蓮しか知らないから、急変した態度にきっと驚かされたのだろう。



蓮は時間経過と共に徐々に上がっていく怒りのバロメーターが最高潮を迎えると、突然クワッと鋭く目を光らせて掃除用具入れのロッカーに目を向けた。




ま…まさか。
ロッカーの中からほうきを出して凶器にして振り回すつもりなの?
ひと暴れして、犯人を突き止めようとする作戦でも考えているとか……。

嘘…。
辞めてよ。



教室に迷い込んだ虫一匹にすら意識が向けられないほど緊迫した雰囲気の室内。
苛立ちを隠せずに背中から炎が燃え上がりそうなほど殺気立たせている蓮。

そして、一切名乗り出ない犯人。


前代未聞の最悪な状況は、嫌な予感以外思い描けない。