校長室の一件から、蓮は高梨先生からの風当たりが強くなった。

先生は蓮に感謝している反面、校長室で私を彼女だと言い切った事が気に食わなかった模様。

先生も一人の男。
一歩一歩着実に詰め寄ってくる蓮に焦りを感じている。




数学の授業を行っているこの教室内には、恋人の私と、私を奪還しようとしているライバル蓮がいる。
一見穏やかに授業が進行されてるように見えても、私には先生がピリピリしているように思えてしまう。



「柊くん、前に出てこの問題式を解きなさい。」

「ほーい。」


「柊くん、この逆関数の定義を答えなさい。」

「はーい。」



先生はしつこいくらい集中的に名指し。
一方の蓮は、予習をしてきているようでものともせずに回答する。

だから、更に面白くない様子。



『柊…、なかなかやるな。』

『…高梨には絶対負けない。』



対立的に火花を散らしている二人の目配せまでもが、私の耳に聞こえてきたような気がしてならない。