私と蓮は二人で頭を下げた後、蓮は高梨先生に目を向けた。



「あ、そうだ。高梨センセー、あの時最後に言った俺の言葉、覚えてる?」

「あっ……あぁ。」



蓮は先生に返事を受け取ると、傍に寄ってそっと耳打ちした。



「センセーはどう思ってるか知らねーけど…。俺はマジだから。」



と、表情一つ変えず挑発的な態度に。
勿論、校長先生と教頭先生の耳には届いていない。

蓮は言いたい事を伝え追えると、そのまま私の手を引いて校長室を後にした。



今までは交際がバレている事を本人に隠してくれていたけど…。
先生に宣戦布告をしたあの日を境に蓮はライバル心を露わにするようになった。




でも、あの時蓮が校長室に来てくれなかったら、どうしようかと思った。
先生はどうやって切り抜けるつもりだったのかな。



蓮…。
どうして私が校長室に呼び出された事を知っていたの?



蓮は全速力で私を屋上に連れていくと、扉の脇にドスンと腰を落として両手で頭を抱えた。



なんか、イライラしてるように見えた。
だから何も喋らずに大人しく蓮の隣に座った。

すると……。



「ざっけんな……。いちいち心配させんなよ…。」



それまで笑顔を取り繕っていた蓮は、騒動後に初めて悲痛の叫びを口にする。
だから、すかさず謝った。



「ゴメン。助けてくれてありがとう…。」



すると、蓮は空の方を見上げて軽く口元を押さえた。
横から見ると口元が僅かに震えてるような気がする。



「こーゆーのマジで勘弁。お前が退学になったら意味がねぇから。」

「ゴメンね。」



彼が口を開く度に、言葉一つ一つから心配する気持ちが強く伝わってきた。
あの時怖かったのは私と先生だけじゃなくて、蓮も一緒だったんだね。



でも、今日の蓮はスーパーマンみたいでカッコよかったよ。