教頭は蓮に確認をした。



「その写真には高梨先生と菊池さんの二人しか写ってないように見えるけど、現場には柊くんも一緒に?」

「俺が写ってなければその場に居ないって事になるの?」


「そうは言ってない。ただ確認の為に…」
「あの日は梓と一緒にいる時に教室にカバンを置き忘れていた事に気付いたから、廊下でフラフラと暇そうに歩いてた高梨に声をかけて教室の鍵を開けてもらっただけ。」



次から次へと繰り広げられる蓮の作り話には驚かされたけど、何も知らない校長先生と教頭先生はまんまと洗脳されていく。



「えっ……。」

「あ~~!もう喉渇いたぁ。ねぇ、もう俺の彼女を教室に連れて帰ってもいい?早くジュース買いに行きたいんだけど。」



まるで駄々っ子のような蓮の迫真な演技力に、校長先生と教頭先生はお互いの顔を見合わせた。

校長先生はゴホンと軽く咳払いすると、先生達の間でも評判のいい蓮に何らかの理解を示したようにこう言った。



「…わかりました。戻りなさい。」

「失礼しましたー。行くぞ、梓!早く頭下げろ。」

「あっ…うん。失礼しました。」



先日、後夜祭の借り物競争でイケメンコンテストの優勝者である蓮の告白が、先生達の間でも話題になったに違いない。
きっと校長先生の耳にも入ったはず。

そのお陰もあってか、疑惑の目が背けられるまで時間はかからなかった。


しかも、今回は写真だけしか二人きりの証拠が無かったせいか、案外あっさりと引き下がった。