キャンプファイヤーの炎が燃え盛る音だけがパチパチと響き渡る、静まり返った後夜祭会場。

前方ステージには、復縁を願う私に向かって90度も頭を下げる蓮。


今まで見た事がないくらい真剣な眼差しだった。




生徒達から寄せられる期待の目。
それによって煽られる気持ち。
半端ないプレッシャーに押し潰されると、自然と身震いがした。





返事を催促してくる会場の雰囲気に耐えられずに目を泳がせていると……。
頭を下げている蓮の口元から、何か小さくボソボソ言っているのが聞こえてきた。



「…えっ、何?聞こえないよ。」



私は会場のみんなに聞こえないくらいの小声で返事をした。

すると……。



「…頼む。お前が俺に努力するはずの10パーセントをいましてくれ。ここで俺を断るなら、明日から学校行かない。」



ステージ上で前向きな返事を催促してくる彼は、彼氏がいる私に向かってまさかのストライキ宣言。
勿論、私にとってメリットは一つもない。



「急にステージ上に連れて来られた上に、告白後にいきなり10パーセントを努力してと言われても困るよ。」

「10パーセントとは言わずに15パーセントでもいいから…。」


「減るどころか、なんで増えてるの…。家電量販店の割引率じゃないんだから増えても嬉しくないし。」

「頼む…。」



重苦しい雰囲気の中、期待を寄せる生徒達に聞こえないくらい小さな声でやりとりしている蓮はいつになく必死だ。



蓮…。
何一人で盛り上がっちゃってるのよ。

もしかしたら、イケメントリオとしてのプライドもあるのかしら。
でも、私からの答えはノーしかないし、あんた1人の問題でもない。



頼むから、こんなクダらない事で人生のストライキなんてしないでよ。
センター試験まで日も残されていないし、卒業間近なんだよ…。

頼むのはあんたじゃなくて、私の方。
お願いだからこれ以上困らせないでよ……。