「ははっ…。ちょっと勘違いしちゃったけど…。こいつは俺の大事なモノ…いや、大事な人です!」
蓮は驚愕的なひと言をマイク越しに伝えると、会場は一瞬にしてどよめきに包まれた。
しかも、自分の言動に対して恥ずかしそうに頭をかいている。
あの……さ。
全校生徒の前で何…言ってるの……。
後夜祭の雰囲気に酔いしれて、遂におかしくなっちゃったの?
用事があって帰宅した人もいるけど、会場には本校のほとんどの生徒が残っているんだよ。
先生達だって傍で見てるし、高梨先生も教室からこの後夜祭のステージを見ているのに…。
だけど、一度点火した炎は更に燃え盛りを見せる。
「ちょっとマイク貸してっ。」
「へっ?」
蓮は司会者からマイクを奪い取ると、私の身体を自分側へと向けた。
そして、スーッと大きく息を吸い込み、こう言った。
「梓!…………俺とやり直してくれっ!もう一度付き合いたい!」
マイクから伝わる蓮の大きな声が、会場内に響き渡る。
会場は和やかな雰囲気から一転し、シーンと静まり返った。
次の瞬間、生徒達の視線は一斉に私へ。
プレッシャーと重圧的な空気に耐えきれなくなると、怖くなって一歩後ずさりをした。
バカバカ、何言ってんの…。
後夜祭のステージ上でいきなり愛の告白?
ちょっと…気は確かなの?
梓は動揺しつつも蓮に現実に戻ってもらおうと思って、軽く腕を引き寄せた。
「やっ……、やだな。いきなり、何言って…。」
「お願いします!」
蓮は私の気持ちなど無視して声をかき消し、深々と頭を下げた。
もう……。
どうしようもなかった。
これが冗談であって欲しいと願うばかりに。
場所は後夜祭で借り物競争のステージの上。
勿論、蓮と二人きりではない。
ほとんどの全校生徒が残っている中で、彼は突然一世一代の賭けに出た。
当然、校内生徒の視線が一点集中している私に逃げ場など…ない……。