先生と二人きりで過ごしていた教室から蓮に突然連れ出された私は、借り物競争中のステージ上に立たされた。


借り物競争のステージに上がれるのは毎年先着10名様だったけど、猛ダッシュで飛び入り参加したせいか、そのまさかの10名様に。



他の参加者が気になってステージ上をざっと見回してみたけど……。
物ではなく人を連れて来たのは蓮一人だけ。

そのせいで、手をつないでいる私達に黄色い声援が飛び交う。
勿論、ブーイングもセットだけどね。





他の参加者が手にしていた【人から借りた大事なモノ】を横目でチラッと見てみると……。
腕時計、手帳、好きな人の写真、そしてどこから借りてきたか分からない人のカツラまで…。

司会者の後夜祭実行委員の生徒は、一人だけ人間を連れて来たツッコミ満載の蓮に早速マイクを向けた。



「えー……。先ほど、イケメン部門で三年連続優勝した柊くん…。今回の借り物競走のテーマは、大事なモノですよ。覚えていますか?」



すると、鼻息を荒くした蓮は自信満々に答えた。



「大事な者だろ。合ってるじゃん。」

「柊くん…、大事な物ですよ。」


「………わかんねぇ。」



蓮のとぼけけた返事に会場は大爆笑。
元々賑わっていた後夜祭が更に盛り上がりを見せていた。