蓮…。
バカなんじゃないの…?

私は先生と付き合ってるって言ったじゃん。
蓮とは付き合えないって、この前伝えたばかりでしょ。



どうして、借り物競争なんて参加するの?
どうして、私を迎えに来たの?
どうして、先生に戦線布告なんてしたの?

どうして、私を【大事なモノ】として借り物競争のステージに連れて行こうとしているの…。

一体、どうして………。






去り際に見えた先生は、理性を失わせてしまったように右手を前に突き出していた。

だけど、声は上げられない。
気持ちを押し殺して耐え抜かなければならない。

秘密の恋愛は想像以上にハードルが高いから。




先生……。
驚いて当たり前だよね。
私達の関係が誰にもバレていないと思っていたから。

交際が蓮にバレていた上に、目の前で彼女の私が連れ去られたんだもんね…。

しかも、元彼の蓮が『簡単には返さない』と言って戦線布告してきたんだもんね。





ステージ上に真っ直ぐに向かう蓮の手に引かれた私の頭の中は、色んな思いが駆け巡った。
逃げようとしても、手を強く握られているから逃げられない。



一人教室に取り残された高梨は、予想外のライバル出現によって、平穏で穏やかだった日々にピリオドを打った。