真っ暗闇な教室の中に入り、最初は五人で行動していたはずだったんだけど…。
中に突き進んでいくと、最初に奏の姿が見当たらなくなった。

梓は蓮のセーターをグイグイと引っ張る。



「蓮…ねぇ、蓮ってば。」

「なんだよ、うるせーな。静かにお化け屋敷に集中しろ。」


「さっきまで一緒に歩いていた奏がいなくなっちゃったよ。」

「………え!奏がいなくなった?」


「きっと奏はお化けに連れ去られちゃったんだよ…。」

「…アホか!周りをよく見ろ。」


「えっ?」

「大和と紬もいないだろ?大和達もお化けに連れ去られちゃったのか?みんなは俺らを二人きりにしようと思って気ィ利かせたんだろ?」


「え?蓮がお化け屋敷に行きたいって駄々をこねたから、うるさくて、しつこくて、ウザく思っていたみんなが愛想を尽かしたから逃げちゃったんじゃなくて?」

「お前…、そんな風に思ってたのかよ…。」



蓮に言われて辺りを見渡すと、一緒に居たはずの紬と大和も居なくなっていた。



「やだぁ。蓮と二人きりで居るとまたみんなに誤解されちゃう。」



梓が困惑した表情を見せると、不機嫌になった蓮はムスッと口を尖らせる。



「ここで俺がいなくなったら、お前は学園生活最後の学園祭を一人ぼっちで周らなきゃいけなくなるけど、それでもいい?俺は一人になっても花音が一緒に周ってくれるけどね。」

「ううっ…。」



意地悪な蓮の鋭い指摘に言葉を詰まらせた。



おっしゃる通り。
一人ぼっちで学園祭を周ってもつまらない。

だから、渋々意見を飲んだ。



こうして私達は、友人の変な計らいによって三年連続で一緒に学園祭を見回る事になった。