『私には絶対この人しかいない』





半年前まで付き合っていた同じクラスで元彼 (れん)の時は、そう盲信していた。



アイドルのように整った顔立ち
耳元で語りかける優しい声
男らしい仕草
ふんわりと漂う甘い香り

そして、強引にキスをしてくる柔らかい唇



あの当時は彼の全てが好きだったし、
他の男には無関心だった。






でも、そんな彼ともお別れの日が。


交際一年半を過ぎた辺りから浮気を繰り返す彼に、愛想を尽かして別れを切り出したのはこの私。



彼は別れに賛同しなかったけど、度重なる浮気に耐えかねた私には、別れという選択肢しか残されていなかった。


二度目までは我慢して浮気を許したけど、
三度目にはもう我慢の限界を超えていた。



この世に絶対なんてあり得ない。









冷たい風が頬を撫で、景色もすっかり秋めいてきた、とある日の夕方。


私は体育館の用具室の扉を締め切り、先生の首の後ろに手を回して熱く唇を交わす。



蓮とは半年前に別れ、その三ヶ月後から通っている高校の元担任で数学教師の高梨先生と現在恋愛中。



蓮しか知らなかった唇が、今や別の男のモノ。



誰にも話せない、
誰にも相談できない、
私達二人だけのスリリングな秘密の恋愛。

親友ですら私達の関係を知らない。



教師と生徒。


そう…。
私達はイケナイ関係。



二人の関係が世間にバレたらただ事では済まされない。
厳しいバッシングは免れられないだろう。



この恋愛は誰にもバレないようにと、お互い細心の注意を払っていたつもりだった。