そして、高校を卒業してから一年ほどが経ったある日、私はとある映画を観に行きたいと思っていた。

(せっかくやし、誰かと一緒に行きたいな……)

今まで映画を観に行くことは何度かあったものの、一人で観に行ったことはなかった。家族は興味がなさそうだったので誰か友達と行こうと思ったのだが、なかなかみんなと予定が合わない。そんな中、唯一「その日大丈夫」と言ったのがヤーサーだった。

そして当日、私とヤーサーはイオンモールへ車で向かい、映画館でチケットを買うことになった。その際、ヤーサーはこう言った。

「ごめん。僕、今手元にお札しかない」

「じゃあ、私が払うわ」

私は二人分のチケットを購入して彼に渡したものの、ヤーサーの口からお礼が言われることはなかった。チケットを払ってくれたんだから、ジュースやポップコーンを奢るよという言葉もなく、ドリンクは各自で支払った。

(えっ、お礼なし!?)

モヤモヤした気持ちになった。レティシアと映画を観に行った時、私がチケット代を支払ったら、彼女は絶対にジュースのお金を払ってくれる。