休憩時間の終わりを告げる鐘が風に乗って中庭まで届く頃には、なんとかライオネル様の愛称を決めて特訓までこなすことができた。結構な精神的ダメージが蓄積していたけど、これで、ライオネル様をわたくしだけの特別な愛称で呼べる。

 教室に戻ると既にライオネル様は席についていて、花が咲くような笑顔で出迎えてくれた。

「リア、ほんの少しの時間なのに、ずっと会ってなかったみたいだ」
「ふふっ、もう大丈夫です。これからは一緒にいられますわ」

 ライオネル様がソワソワとした様子でわたくしを見つめてくる。言いたいことはわかっている。シルビア様相手に何度も特訓したのだから、問題ない。

「ライル様、わたくしのライル様」
「リア! ああ、もう今日はなんて素晴らしい日なんだ……! リアが僕を愛称で、しかもリアだけの愛称で呼んでくれるなんて……!」
「ライル様、ほら授業が始まってしまいますわ」
「うん、わかってる。リア、僕の女神。これからもずっとそばにいて」
「はい、もちろんですわ」

 とてもご機嫌なライオネル様の笑顔のおかげで、午後の教室は春の陽だまりのような温かい空気が流れていた。
 生徒たちの空気は微妙だったし、マリアン王女はなぜかキリキリ怒っていたけれど、まあ、ライオネル様が幸せならそれでいいと思った。