とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


 ジークが淹れてくれたお茶に口をつけて、明日からのスケジュールを頭の中で組み直していく。ハーミリアを送り終わってからが勝負だ。
 僕の場合は習得するまでに時間がかかるから、いかに短時間で効率よく魔法の訓練をするか考えてから始めた方が結果的に早く身につく。

「ライオネル様、こんな本を見つけましたよ」

 ジークの声に視線を向けると、その手には【恋人の心を繋ぎ止める99の方法】と書かれた本があった。

「恋人の……心を繋ぎ止める……だと!?」

 そのタイトルに軽く衝撃を受ける。このような本が屋敷の図書室にあるとは盲点だった。今まで学院で学ぶような書物しか読んでいなかったので、気が付かなかった。

「魔法の本もいいですけど、こういうのもライオネル様には必要じゃないですか?」
「……これは部屋に戻って読む。今日の調べ物はここまでだ」
「承知しました。では私が持っていきますね」

 後ろからついてくるジークが笑いを堪えている気配がしたけど、僕はなにも言えずに足速に部屋へと戻ってきた。