とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


 駄々をこねる子供みたいだとわかってる。
 しかも自分の侍従に頭まで下げて、策を授けてくれと縋るのは本当にみっともない。それでも、どうやっても、ハーミリアの気持ちを繋ぎ止めていたいのだ。

「うーん、わかりました。それでは少しだけズルをしましょう」
「……それでハーミリアが僕のそばにいてくれるなら、どんなことでもしよう」

 失いそうになってようやく、自分はもう彼女なしでは生きていけないと理解した。
 彼女のそばにいるためなら、僕のちっぽけな矜持など捨ててもかまわないと決心したのだ。

 僕は翌日からイヤーカフ型の通信機をつけて、ハーミリアのお見舞いに向かった。
 この魔道具は馬車で待つジークにつながっていて、魔力を通すことで映像や音声を相手に届けることができる。これですぐに真っ白になって固まってしまう僕の言動をアシストしてくれるものだ。

 ハーミリアの部屋に入ると彼女と同じ匂いが鼻をかすめて、それだけで天にも昇る心地になった。しかしそんなことを悟られて嫌われたら終わりなので、なんとか平静を装う。

 ジークの指示のおかげで、今までよりも格段にハーミリアと会話ができるようになった。