とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


 それに比べて不器用な僕は、人の二倍も三倍も時間をかけて勉強も魔法も身につけてきた。剣術だけは絶望的なセンスでどうにもならなかったけれど。

 それでもハーミリアの婚約者として不動の地位を築くために、なんでも必死にこなしてきたのだ。
 だけど僕がこんなに情けないから、ついに見切りをつけられたのかもしれない。

 僕はひと目見た瞬間に天使のように愛らしく、女神の如く心の美しいハーミリアに心を奪われた。
 父上と母上に彼女以外とは結婚しないと主張して、半ば脅しをかけて婚約を結んでもらった。もちろんハーミリアの生家が潤うように、できる限り融通している。

 ハーミリアの素晴らしいところは、見た目の美しさだけではなかった。
 努力しないと人並みにこないせない僕を笑うことなく、立派だと褒めてくれたのだ。

 僕が努力の天才だと言って、ずっと支え続けてくれた。
 それが本当に嬉しくて、いつだって僕はハーミリアに優しく背中を押されてきたのだ。

 幸い友人たちとのコミュニケーションはさほど苦労してこなかった。
 ただの友人や、貴族の令嬢子息なら穏やかに微笑んでいれば、大抵相手から歩み寄ってくれた。もちろん僕の実家の影響もあるだろう。

 でも本来自分は不器用だと理解していたから、穏やかで正しい人間であるように心がけてきたし、誇り高くあるべきだと矜持を持ってやってきた。それですべてが上手くいっていた。