* * *
ハーミリアが口をきけなくなった翌日、僕は心配のあまり彼女の寝室にノックもせずに侵入してしまい、冷めた目を向けられた。
かつてないほどの失態に、激しく自己嫌悪したが時既に遅しだった。
僕はタックス侯爵家の三階にある私室に戻ってから、今度こそこそ愛しいハーミリアに捨てられるのかと激しく落ち込んでいた。
「はあ、ライオネル様。いい加減シャキッとなさってください」
「もう、ダメだ。僕は、ついに愛想を尽かされたのだ……!!」
「ハーミリア様がやっと不良物件を掴んだと理解されたのですね。よかったです」
「ジーク、なんてこと言うんだ! まだ婚約破棄されていないぞ!」
前日からいつもと違うハーミリアの態度に不安を感じて、侍従であるジークに話し相談に乗ってもらっていた。彼は僕の乳母の子として共に侯爵家で育ってきた兄のような存在で、本当に頼りになる。
「昨日はあんなに深刻な顔でどうしたのかと思いましたけど、ついにご自分で決着をつけられたのですね」
「だから! まだハーミリアは僕の婚約者だ!」
「わかってますよ。昨日も泣きそうな顔でハーミリア様に嫌われたかもしれないって言い出したから、励まそうと思ったんです」
「いや、むしろ傷口が広がってるんだが?」
……少々乱暴なところはあるが、本当にジークは頼りになるのだ。
ハーミリアが口をきけなくなった翌日、僕は心配のあまり彼女の寝室にノックもせずに侵入してしまい、冷めた目を向けられた。
かつてないほどの失態に、激しく自己嫌悪したが時既に遅しだった。
僕はタックス侯爵家の三階にある私室に戻ってから、今度こそこそ愛しいハーミリアに捨てられるのかと激しく落ち込んでいた。
「はあ、ライオネル様。いい加減シャキッとなさってください」
「もう、ダメだ。僕は、ついに愛想を尽かされたのだ……!!」
「ハーミリア様がやっと不良物件を掴んだと理解されたのですね。よかったです」
「ジーク、なんてこと言うんだ! まだ婚約破棄されていないぞ!」
前日からいつもと違うハーミリアの態度に不安を感じて、侍従であるジークに話し相談に乗ってもらっていた。彼は僕の乳母の子として共に侯爵家で育ってきた兄のような存在で、本当に頼りになる。
「昨日はあんなに深刻な顔でどうしたのかと思いましたけど、ついにご自分で決着をつけられたのですね」
「だから! まだハーミリアは僕の婚約者だ!」
「わかってますよ。昨日も泣きそうな顔でハーミリア様に嫌われたかもしれないって言い出したから、励まそうと思ったんです」
「いや、むしろ傷口が広がってるんだが?」
……少々乱暴なところはあるが、本当にジークは頼りになるのだ。



