翌日、ライオネル様がやってきて、やっぱり今日も手土産を用意してくれていた。
「今日は鎮痛効果の香りを放つ花を持ってきた。これで少し落ち着くといいんだが」
その紫色の小ぶりな花がついた花束を、メイドが花瓶に生けてくれた。ふわりと漂うほんのり甘くて爽やかな香りに心まで落ち着いていく。
そこでわたくしは用意しておいた紙とペンを取り、ライオネル様の目の前でわたくしの気持ちを書きしるした。
【いつもわたくしのために手土産を用意してくださって、ありがとうございます】
「問題ない」
わたくしが書いた文字を読んで、ライオネル様が返事を聞かせてくれる。少し強張っていた表情が和らいだように感じた。
【でも、もう手土産は不要ですわ】
「な……なぜだ?」
一転してライオネル様は青ざめた表情で震えはじめる。
【わざわざ侯爵家に戻られるのは大変でございましょう?】
「そんなことはない」
【でも——】
もっとライオネル様と話す時間がほしいと書こうとした時だ。突然ライオネル様が、膝をついて頭を下げた。
「ハーミリア、すまない! 僕が臆病で無神経で気が回らないために君に不快な思いをさせてしまったのだろう!?」



