とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


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 婚約者の様子がおかしいと気が付いたのは、学院に一緒に通うために馬車で迎えにいった時だった。

 いつも「ライオネル様」と嬉しそうに声をかけてきて、さまざまな話をしてくるのに、口を開かなかった。
 いつもと明らかに違うハーミリアの様子に、普段は決して視線を向けることはないのに思わずじっくりと観察してしまった。

 もしかしたら体調がすぐれないのか? そうだとしたら、早々に送り届けて休ませないといけない。
 そうなれば僕の婚約者なのだから、当然送っていくつもりだった。

 でもハーミリアはまるで完璧な淑女のようにアルカイックスマイルを貼りつけて、静かに座っている。
 僕の視線に気づいて目が合ったけど、すぐに逸らされてしまった。

 どういうことだろう。今までまともにハーミリアの顔を見てこなかったから、なにか気付かぬうちに見落としたことでもあるのだろうか?
 そうだとしたら、本来不器用な僕には気付くことができないだろう。